ゲシュタルト・グループセラピー(GGT)第一期研究プロジェクトについて

以下の研究プロジェクトは、大同生命厚生事業団の2023年度地域保健福祉研究助成の助成を受けて計画・実施されました。グループセラピーの実施期間は、2023年10月から、2024年3月までです。

プロジェクトのミッション

働く上で対人関係やコミュニケーションの難しさを感じている人、うつなどのメンタルヘルス不全や発達障害に起因する適応の困難を抱える人を対象に、継続的にゲシュタルト・グループセラピー(GGT)を実施し、その効果を確かめるための研究プロジェクトです。GGTは、「今ここ」の気づきや関係性にフォーカスしつつ、実験的なワークを通じて新しい行動パターンを学んだり、共感性、対人関係スキル、QOL(生活の質)の向上を促進するという特徴を持っています。今回の試みでは、日本ゲシュタルト療法学会が認定するトレーニングコースを修了したファシリテーターがリードするグループを、半年間に渡って継続的に開催します。また、その前後にインタビューと心理アセスメントを実施し、GGTの効果を測定します。

次のようなメンバーを募集しています。

・働く上で対人関係やコミュニケーションの難しさを感じている人

・うつや不安障害、適応障害、発達障害などのメンタルヘルスの問題で社会適応上の難しさを抱えておられる方

・継続的なグループに参加する意思のある方

・研究にご協力いただける方(前後のインタビューや心理アセスメントに同意していただける方)

・メンタルヘルスの問題で主治医がいる場合グループへの参加に同意が得られる方

ご参加・ご協力いただける方、もう少し詳しく聞いてみたいと思われる方は、下記「お問い合わせフォーム」よりご連絡ください。


*このプロジェクトは、大同生命厚生事業団2023年度地域保健福祉研究助成の助成を受けて計画・実施されています。


ゲシュタルト・グループセラピー研究プロジェクト代表

久松睦典(臨床心理士・公認心理師/かささぎ心理相談室


ゲシュタルト・グループセラピーとは


日本では、「ゲシュタルト療法」も「グループセラピー」も、あまり馴染みがない方が多いかもしれません。 ゲシュタルト療法は、1950年代くらいから、欧米を中心に発展してきました。大きな視点で眺めると、ゲシュタルト療法は「人間性心理学」や「ヒューマンポテンシャル・ムーブメント」といった、人間の成長や幸福に焦点を当てた心理学の潮流に含まれています。 ゲシュタルト・グループセラピーは、ゲシュタルト療法のアプローチをグループセッションに適用したものです。このグループセラピーは、個人カウンセリングでは得られない独自の利点を持っています。例えば、グループ内の他のメンバーの体験や感情と触れ合うことで、メンバーは自己の課題や感情をより深く理解し、共感とサポートの中で成長する機会を得ることができます。 ゲシュタルト・グループセラピーは、集団認知行動療法やSST(社会的スキルトレーニング)と比べて、いくつかの特徴があります。 全体的なアプローチ:ゲシュタルト・グループセラピーは、人の感情や行動、体の感じ方、人間関係など、様々な側面を総合的に考慮します。これにより、人はよりよく自分を理解し、自分の問題に向き合えるようになります。 現在の経験への注目:このセラピーは、過去の出来事や将来の心配ではなく、「今ここ」の気持ちや経験に焦点を当てます。自分の心の中にあることを大切にし、そこから成長や変化を促すのが特徴です。 グループの関係性:ゲシュタルト・グループセラピーでは、グループ内での人との関わりやコミュニケーションが重要視されます。他の人との交流を通じて、自分自身と他の人との関係を理解し、成長できるようにサポートしています。 表現の重要性:このセラピーでは、創造性や表現の重要性を強調します。絵や演劇などの表現を通じて、感情や心の中の気持ちをより深く理解し、新たな自分を見つけ出すことができるのです。 気づきと自己成長:ゲシュタルト・グループセラピーは、気づきと自己成長をサポートします。自分の中にある力や能力を引き出し、自己成長に向けた実際のアクションを促すお手伝いをします。 このアプローチは、さまざまな課題や悩みを抱える人々に対して有効です。 12回のゲシュタルト・グループセラピーに継続して参加し、体験的に学ぶことで、次のような効果が得られると考えられます。
  • 社会的スキルの向上:継続的なグループへの参加を通じて、メンバーの社会的スキルが向上し、職場における適応能力や生産性が高まる。
  • メンタルヘルスの改善:継続的な介入と相互サポートを通じて、メンバーのメンタルヘルスが改善し、職場におけるストレスの軽減や心理的安定性の向上に寄与する。
  • 対人関係の改善:プログラムを通じて、コミュニケーション・スキルや共感性などの他者との関係性を築き、維持する能力が向上し、職場や家庭での対人関係が改善する。
  • 生活の質(QOL)の向上:職場での適応力や満足度が高まることで、幸福感や自己実現の傾向が増す。また、自分をより肯定的に捉えることができるようになる。 また、
  • やってみることで学ぶ
  • 新しい相互の関わり方を試す
  • より直接的で明確になる
  • 自己開示がより快適になる。
  • 親密さとセクシュアリティをより快適に感じるようになる
  • 対立を解決するためのより良い方法を学ぶ
  • 非生産的なパターンに対するより良い理解を深める
  • より良いコミュニケーションスキルを身につける
  • 仲間からの率直なフィードバックが得られる といったことも期待できます(Bud Feder & Peter Cole, 2013. Gestalt Group Therapy: A Practical Guide, Createsp ace Independent Pub)。

プログラムの詳細


オンライン説明会

この研究プロジェクトと全12回+前後の個人インタビュー(オンラインでのインタビューと心理テスト)の詳細を説明します。「ゲシュタルト・グループセラピーについてもう少し知りたい」「自分が参加することにメリットがあるかどうかを知りたい」「参加するかどうか迷っているけれど、もう少し詳しく聞いてみたい」「どんな人たちがこの研究プロジェクトをやっているのか、見てみたい」といった方もお気軽にご参加ください。参加無料です。このページ下の「お問い合わせ・お申込みフォーム」からご連絡ください。Google Meetの案内をお送りします。

事前個人インタビュー

60分程度、オンラインで個人インタビューを行います。その前後に、心理アセスメントにご協力ください(結果は後日、フィードバックします)。

ゲシュタルト・グループセラピー 

各回3時間、土曜日の午後13:30~16:30、場所は芦屋市民センター

参加費:24000円(12回分)
*参加費は、継続してグループに参加していただくための動機づけとして前納一括でお支払いいただきます。
*経済的な困難を抱えておられる方はご相談ください。スライド制の料金を用意しています。


各セッションは、おおよそ次のような流れで行われます。

・チェックイン:今ここで感じていることや思っていることを全員でシェアします

・心理教育:各回のテーマについて、テキストを読みながら小講義を行います

・エクササイズ:テーマに沿った「気づきのエクササイズ」を行います

・グループ・プロセス:グループ全体での対話とワーク(自身や他の人との関係、自身の感情、課題に向き合い、内面の気づきを得るためにファシリテーターとグループのなかで対話する)の時間です

・チェックアウト:この時間を共に過ごして今感じていること、言葉にしておきたいことをシェアします


【第1回】ゲシュタルト・グループセラピー(GGT)への導入

日時:2023年10月7日(土)13:30~16:30 [403号室]

ゲシュタルト・グループセラピー(GGT)とこのプログラムで学べること、得られることなどを説明します。GGTは、個人セラピーとは異なり、グループという枠組みで行われる心理療法の一つです。GGTでは、個人の内面だけでなく、他者との関係性やコミュニケーションが重要視されます。このプログラムでは、GGTの基本的な考え方や視点を学びながら、グループセラピーの場で効果的なコミュニケーションや関係性の築き方を探求します。GGTを通じて、自己と他者との間の相互作用に気づき、より良い人間関係を築くためのスキルを身につけることが期待されています。また、GGTのルールとプログラムの概要も伝えます。ゲシュタルト療法でもっとも大切にされている「気づき」のエクササイズを行なってみましょう。

【第2回】「今ここ」の気づきによって人は成長する:マインドフルネス

日時:2023年10月21日(土)13:30~16:30 [303号室]

 「気づき」とは、自己や他者、環境との関係や、自分の感情・感覚・思考に対して意識を向けることを指しています。気づきによって、人は自分を理解し、受け入れ、意識を拡げ、成長していくことができます。気づいていると、自分で選択することが可能になります。「内部領域の気づき(身体の内側の感覚や感情)」「外部領域の気づき(五感で感じる現実)」「中間領域の気づき(思考や空想)」という「気づきの3つの領域」を体験的に学びます。

【第3回】身体の声を聴く:フェルトセンスと身体的知性

日時:2023年11月4日(土)13:30~16:30 [404号室]

身体的知性とは、身体の感覚や感情を通じて得られる知識や洞察のことを指します。人間の身体は複雑な情報を処理し、無意識のレベルでさまざまな情報を感知しています。フォーカシングを考案したジェンドリンは、言葉にはまだうまく表現できないけれども、身体の中で感じる微妙な感覚や知覚のことを「フェルトセンス」と呼びました。フェルトセンスに触れて、身体の声を聴くエクササイズをやってみましょう。

【第4回】わたくしといふ現象は:場の理論と全体性

日時:2023年11月18日(土)13:30~16:30 [303号室]

ゲシュタルト療法は、「全体は部分の総和よりも大きい」という考え方に基づいています。個人の悩みや心理的問題も、「問題」のみを切り離して扱うのではなく、その人が生きる場や環境の全体性の視点から捉えられます。グループもまた、ひとつの全体性をもった場をつくります。「私」もまた、その場や他者との関係性、文脈から影響を受けながら、変化していくプロセスです。こうした視点をもつことで、家族関係や組織の人間関係を、より広い文脈でとらえることができるようになります。家族や組織など、自身が現在身をおいている場の関係性を、視覚的にとらえてみるようなエクササイズを試みます。

【第5回】見え方はひとつではない:図と地

日時:2023年12月2日(土)13:30~16:30 [201号室]

「図と地(Figure and Ground)」とは、知覚心理学(ゲシュタルト心理学)で主に扱われてきた概念です。「図」とは、注目している対象や主題で、意識的に認識されるものです。一方、「地」は図の背景や環境です。図と地は相互に関連していて、一方を強調すると他方が薄れたり、逆に注意を切り替えることで図と地が入れ替わることがあります。今、悩んでいること、気になっていることは、ひとつの「図」を形づくっていますが、その背景にはまだ注意が向けられていない「地」があります。図を十分に経験すると、地と入れ替わり、新たな図が浮かび上がってきます。「見え方・とらえ方はひとつではない」「多様な見方がある」ということを体験的に学びます。

【第6回】ひとそれぞれの世界を生きている:現象学と間主観性

日時:2023年12月16日(土)13:30~16:30 [303号室]

現象学は、主体の経験や意味づけに焦点を当てる哲学的アプローチです。また、間主観性とは、人間の経験や認識が主観的な個々の内面だけでなく、他者との関係性の中で形成されるという概念です。つまり、私たちが自分自身や世界を捉える際には、他者との相互作用やコミュニケーションが大きな影響を与えるという考え方です。GGTでは、グループの中での相互作用やコミュニケーションを通じて、異なる視点を理解し、共感することを重要視します。それぞれのメンバーが自分自身の世界を尊重し、他者との違いを受け入れることで、より豊かな関係性を築くことができます。

【第7回】十分に経験すると、次に進める:未完了と経験のサイクル

日時:2024年1月13日(土)13:30~16:30 [303号室]

ゲシュタルト療法の「経験のサイクル」は生物が欲求を充たす一連の行動を表現しています。それは以下の段階から成り立ちます:感覚(欲求を感じる)、気づき(感覚に気づく)、動化・興奮(行動の意欲が高まる)、行動(欲求を実行)、接触(物理的または感情的なつながり)、充足・満足(欲求が満たされる)、引きこもり(休息や次の準備)。また、未完了の体験とは欲求が充たされなかったことで中途半端に残る状態で、ゲシュタルト療法ではこれを取り扱い、感情の表現を通じて解決を促すアプローチを行います。未完了の体験が成長や人間関係に与える影響にも焦点を当てられます。

【第8回】あなたはあなた、私は私:コンタクトの境界

日時:2024年1月27日(土)13:30~16:30 [102号室]

「コンタクト・バウンダリー(接触境界)」とは、人間と環境との相互作用がおこる場であり、個人と周囲との関係性が成り立つ境界を指します。この境界は、人間の行動や心理状態が環境との関係によって形成され、変化していく場所です。

コンタクト・バウンダリーには5つの障害があります。1つ目は「鵜呑み(Introjection)」で、他者の意見や価値観を無批判に取り込んでしまうことです。2つ目は「投影(Projection)」で、自分の感情や特性を他者に投影し、他者が自分と同じように感じていると思い込むことです。3つ目は「無境界(Confluence)」で、自己と他者の境界がぼやけて他者の意見や感情が自分のものとして一体化してしまうことです。4つ目は「反転行為(Retroflection)」で、他者に向けるべき感情や行動を自分自身に向けることです。5つ目は「逸脱(Deflection)」で、自己に向き合うことを避けて話題を転換してしまうことです。

これらの障害に気づき、コンタクト・バウンダリーをクリアにすることで、本来の自分を取り戻し、成長することが可能になります。

【第9回】喪失と傷つき:トラウマと創造的調整

日時:2024年2月10日(土)13:30~16:30 [303号室]

トラウマとは、自然災害や虐待といった出来事で、強い恐怖や苦痛を経験したり、目撃することで心理的にダメージを受けることを指しています。未完了の体験としてトラウマが残ることで人間関係や自己評価に影響を与えることがあります。創造的調整は、創造的な方法で課題や問題に対処することを意味しています。現在の「問題」や「症状」としてとらえられていることも、その人なりに苦しい環境を生き延びようとしてきた創造的調整の名残なのです。GGTでは、現在の環境や関係により適切に、柔軟に対処するための創造的調整を促進するためのサポートを提供します。

【第10回】「ありのまま」と「なり(あり)たい」私:変容の逆説的理論

日時:2024年2月24日(土)13:30~16:30 [市民会館・美術室]

人は「こうなりたい」「こうあるべきだ」といった理想を追い求めますが、本質的な変容は、自分でないものになろうとするのではなく、ありのままの自分を体験するときに起きます。「あるべき自分」と「ありのままの自分」との間で葛藤し、揺れ動いている自分をそのまま感じ、一度に一つずつ、どちらかの「自分」に集中し、内面的な対話を進めることで、統合と本質的な変容が生じます。「トップドッグ(勝ち犬)とアンダードッグ(負け犬)」のエクササイズを通じて、変容の逆説的理論について体験的に学びます。

【第11回】私とあなたが出会うということ:我-汝と対話

日時:2024年3月9日(土)13:30~16:30

私とあなたが本当の意味で出会って、深い対話(dialogue)をもつこと、これは哲学者のマルティン・ブーバーが「我-汝」の関係という言葉で表現したことです。対話は単なる会話ではなく、互いの距離を置かず、親密な関係で向き合い、相手をかけがえのない存在として認め合うことで、より深いレベルで自由に感情や経験を交換し合うコミュニケーションです。対話にはリスクがありますが、それを乗り越えることで深い理解とつながりが生まれます。

【第12回】あなたの人生も物語になる:メタファーとナラティヴ

日時:2024年3月23日(土)13:30~16:30

人々はお互いに関係しあい、影響しあって生きています。私たちは多くの出会いや別れを経験しますが、それらは私たちの人生の一部であり、他者とのつながりを通じて成長し、学び、発展していく機会となります。GGTの最終回では、自らの人生における重要な出会いや縁、そして別れを振り返りながら、人生をひとつの物語(narrative)として語り直してみましょう。


事後個人インタビュー

60分程度、オンラインで個人インタビューを行い、グループ体験をふりかえります。その前後に、心理アセスメントにご協力ください(結果は後日、フィードバックします)。


同窓会と研究成果の

報告 

グループの終了からおよそ半年後、同窓会を兼ねて研究成果の報告を予定しています(参加は自由です)。


オンライン説明会のご案内


この研究プロジェクトと全12回+前後の個人インタビュー(オンラインでのインタビューと心理テスト)の詳細を説明します。「ゲシュタルト・グループセラピーについてもう少し知りたい」「自分が参加することにメリットがあるかどうかを知りたい」「参加するかどうか迷っているけれど、もう少し詳しく聞いてみたい」「どんな人たちがこの研究プロジェクトをやっているのか、見てみたい」といった方もお気軽にご参加ください。参加無料です。

2023年9月8日(金)20時~21時

2023年9月9日(土)20時~21時

ゲシュタルト・グループセラピー説明会用スライド